前回のブログエントリでは、GRANBEAT DP-CMX1 とSHURE SE846 の組み合わせにおいて、ノイズ問題は解決した、と書きましたが、
「BA(バランスドアーマチュア)のインピーダンス変動(対周波数)による、音の違和感」
の問題についても考察してみます。
BAイヤホンのインピーダンス変動については、以前のブログエントリでも紹介した、こちらのサイトが非常に参考になります。
Sandal Audio: ヘッドホンアンプの出力とか、インピーダンスについて(後半)
http://sandalaudio.blogspot.jp/2016/07/blog-post_9.html
一言で言うと、SHURE SE846 のような、インピーダンスが低く、かつ、変動が大きなイヤホンは、アンプ側の出力インピーダンスの影響を受けやすい、ということです。
この影響とは、特定の周波数で音圧が大きく、特定の周波数で音圧が小さい、つまり全域でフラットではなくなる、という意味です。ただ、それが悪である、と言うことではなく、アンプやイヤホン、そしてそれらの組み合わせにおける個性や味、ということになるのかもしれません。
(みんなが横並びのフラットな特性だとしたら、こんなにつまらないことはありませんから)
SHURE SE846 のインピーダンス特性は、
「低域のインピーダンスは16Ωになり、クロスオーバー周波数(6-8kHz)では5Ωにまで落ち込みます。」
と、上のサイトに書かれています。
つまり、低域はアンプの特性に影響されにくいけど、中高域はアンプの特性に影響されやすい、と言うことになります。
さて、一方でGRANBEAT DP-CMX1 のアンプ特性(出力インピーダンス)は、いかほどなのか?が気になります。
アンプの中には、出力インピーダンスをSpecとして提示しているものもあります。
ハイスペックなポタアンとして有名なmojo は、出力インピーダンスが0.075Ωと記載されています。(超、低インピーダンスです)
しかし、私が購入したGRANBEAT DP-CMX1 は出力インピーダンスが提示されていません。
でも、出力インピーダンスを推測する方法があります。それは、「対応インピーダンス」のSpecです。これは、アンプの出力インピーダンスを示した数値ではなく、アンプに接続するヘッドホン側の適合可能なインピーダンスを示した値です。
GRANBEAT DP-CMX1 の対応インピーダンスは、アンバランス(シングルエンド)で16~300Ω と記載されています。
http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/smartphone/granbeat/spec/#nav
ここから推測できるのは、16Ωという低いインピーダンスのヘッドホンを接続しても影響を受けない、アンプの出力インピーダンスである、ということです。影響を受けない出力インピーダンスとは、具体的な数値は各メーカの設計思想によるところが大きいです。
(出力インピーダンス1/16 (1Ω)で影響を受けないとするメーカもあれば、1/2 (8Ω)で影響を受けないとするメーカもあるかもしれません)
全く別のアプローチとしては、GRANBEAT DP-CMX1 に搭載されているアンプICのデータシートを見る、と言う方法があります。
GRANBEAT DP-CMX1 には、ESS TECHNOLOGY社のSABRE9601K というアンプが搭載されています。
http://www.esstech.com/index.php/en/products/audio-amplifiers/sabre9601k/
ESS社はDAC ICを含め、すべてのICのデータシートをホームページに掲載しない主義ですが、上記ホームページの下に適用回路の例が記載されており、そこには4.7Ωの出力抵抗を介して出力されている回路が掲載されています。
この回路は設計例であるため、実際にはONKYOがどのようなSABRE9601K の周辺回路設計をしているのか、によるのですが、今やグループ会社となっているPioneer のDAPに搭載されている SABRE9601K の周辺回路の写真にも、しっかり4.7Ωのチップ抵抗が見て取れます。(4R7と刻印されているチップ抵抗です)
まとめると、GRANBEAT DP-CMX1 の出力インピーダンスも4.7Ωである可能性が高いということになります。
そして、出力インピーダンスが4.7Ωであることから、推奨のヘッドホンインピーダンスは16Ω~、ということにしているのだと思われます。
もし、GRANBEAT DP-CMX1 の出力インピーダンスが4.7Ωの場合、SHURE SE846のクロスオーバー周波数(6-8kHz)が約5Ωですので、GRANBEAT DP-CMX1 からの出力と、SE846への入力で折半となり、出力された電圧の半分しかイヤホンに届かない、という計算になります。
一方、SE846 の低域インピーダンスは約16Ωですので、アンプICから出力された電圧の75%がイヤホンに届きます。低域と高域でこれだけの電圧の差が発生するため、一言で言えば、低域はガッツリ出ているのに、高域がすぼむ印象を受ける(=違和感)、ということになります。
ただし、何度も繰り返しますが、これは「悪」と言うわけではなく、個性、と考えた方が良いです。何故かというと、SHURE SE846 のようなじゃじゃ馬イヤホンをすべての条件をクリアして駆動できるアンプというのはなかなか存在しないからです。
SE846 がユーザーがノズルを交換して、高域をチューニングできる仕組みを採用した背景が、クロスオーバー周波数(6-8kHz)でインピーダンスが落ち込むことをカバーするためなのかもしれない、と考えると、やっぱり良く考えられているイヤホンだな、と感心したりもします。
長くなってしまいましたが、次のブログエントリで、実際にGRANBEAT DP-CMX1 にSE846を接続したときに聞こえてくる音と、今回の考察について答え合わせをしてみようと思います。