K12マーチにはもともと水温計(Water Tempメータ)がありません。あるのは、水温警告灯で、水温が低いときには青く(エンジン始動時はしばらく青く点灯しています)、水温が高い時には赤く光るインジケータです。ま、普通に走るだけならこれだけで十分で、青く点灯しているときには、エンジンが暖まるまで暖気という意味で回転を落とし気味にして走ればいいし、赤く点灯したらすぐにエンジンを止めて修理に出せばいいわけです。 しかし、サーキットなどで激しく走る場合には機能的にこれでは足りません。エンジン冷却水の水温は、エンジンの種類によっても多少異なりますが、一般的に80℃~90℃が最適と言われています。水温がこの範囲に入っていれば、エンジンはその能力を最大限に発揮することができます。ちょっと激しく走って水温が上がっていくと、どんどんエンジンはその性能を発揮しにくくなり、最後はいわゆるオーバーヒートという状態になり、エンジンに多大な損傷を与えることにもなります。 K12マーチに備わっている水温警告灯の赤いインジケータは、水温を適正な温度に保つために用意されているのではなく、何か問題が発生し水温が限界値に達する前にエンジンが壊れないようにするためのものであると言えます。では、エンジンを一番良い水温下で走行させるためはどうしたらいいのでしょうか?そこで必要になるのが水温計です。 ただ、気を付けなければならないのは、K12マーチ以外に一般的なクルマに標準装備されている水温計は、渋滞していても山道を走っていても、ほとんど真ん中か、それよりちょっと下を示していると思います。これは水温がずっと安定しているわけではなく、メータでわざと針を固定しているのです。針が水温にリニアに動いてしまうと、必要以上に運転者に不安を与えてしまうと言うことで、例えば70℃~100℃は真ん中を指すようにしておき、それ以上の水温になったときにやっと針を上に動かすと言う設計をしています。つまり、標準装備の水温計はK12マーチの水温警告灯とほとんど同じ機能しか有していないと言うことになります。 事実、以前乗っていたRX-7にも水温計は標準装備されていますが、あえて後付けで水温計を取り付けていました。後付けの水温計は、夏場、渋滞なるとすぐに100℃、クルマが動き出してラジエータに風が当たるようになるとすぐに75℃、というように極端に針が上下に動いていましたが、その状況においても標準装備の水温計はピタッっと真ん中から微動だにしませんでした。
さて、ひとことに水温計を取り付けるといっても、タコメータのように簡単にはいきません。水温を測定するにはセンサーが必要で、そのセンサーは冷却水(クーラント)に接触させないといけません。水温計の取り付けがうまくいくかどうかは、センサーをどこに取り付けるかが重要なポイントになります。 水温計を取り付ける際の水温情報入手方法を以下に示します。
方法 | 説明 |
ラジエターホースの途中にセンサー設置 | エンジンからラジエターにつながっているホースの途中を切断し、T字型のアダプタを設置して、そこにセンサーを固定する。一般的で水温が正確に測定可能。個人での取り付けはホース切断するなどの気合いが必要。もちろん、取り付け後クーラントの補給、エア抜きが必要。 |
クーラントの通り道付近にセンサー設置 | クーラントが通る付近のエンジンヘッドや、ポンプ周辺にセンサが取り付けられるようなネジを切るなどの加工をする。もしくは元々あるネジ穴を利用する。個人での取り付けはほとんど無理だが、クルマによってはアフターパーツとして販売されていることがある。 |
既設センサー信号分岐 | もともと取り付けられている水温センサーとECU(エンジンコントロールユニット)間の電圧信号を分岐する。機械的な加工は必要ないが、電気的にはそのセンサーの出力特性、分岐する際のインピーダンスを考慮するなど、結構難しい。信号を分岐するため、本来水温信号を必要としているECUが水温を誤測定してしまう恐れもある。 |
メータASSYから信号分岐 | 通常、ECUから、メータへ水温信号が接続されているため、その間の信号を分岐する。もともと水温メータ用の信号なので、ECUなどの影響は少ない。しかし、その信号の意味を解釈するのは、内部資料などがないと難しい。 |
診断信号出力を分岐 | 最近のクルマはディーラーで診断機を接続することで、クルマのどの部位に異常が発生しているかがわかるシステムが最初から組み込まれている。その診断機を接続するコネクタにはクルマのあらゆる情報が出力されており、水温情報も出力されている。その信号を利用すると、全くの無加工で水温表示が可能となる。しかし、その信号の意味を解釈するのは、内部資料などがないと難しい。 |
以前、RX-7では、表の一番上の方法を採用しました。自分でラジエターアッパーホースをカッターで切断したりして、結構たいへんな作業でした。やはり、買ったばかりの車にカッターを突きつけるのは結構勇気が必要です。しかも、取り付け後、どうもクーラントが減るなぁと思って調べてみたら、アダプタ部から少しずつクーラントが漏れていました。その時はその程度の問題で済みましたが、もし走行中にアダプタがはずれ、クーラントが一気に漏れたりしたら、当然レッカー移動が必要になるでしょうし、最悪エンジンがお釈迦になるかもしれません。もちろん、しっかりとした作業をすれば、クーラント漏れなどの不具合は防げるかもしれませんが、もともとアダプタなどない部分にホースを切断してアダプタを取り付けるわけですから、可能性としてはそこがはずれることだって全く無いとは言い切れません。ラジエターホースを切断してなければ、少なくともその部位でラジエターホースからいきなり水漏れするのは無いと断言できます。危険が発生する可能性はあるより、無いと断言できる方が良いですよね。ということで、個人的にはラジエターホースを切断するのはさけた方がいいと思っています。
で、私が次に考えたのが、表の3つ目の方法です。幸いK12マーチの整備要領書には、取り付けられている水温センサーの特性がグラフ表示されています。仕事の関係で、多少電子回路などの設計もできますので、この信号を分岐して市販されている水温計に信号として入力することを考えました。 RX-7で使用して取り外してあった大森の電子式水温計とそのセンサーがありましたので、早速台所で実験をしてみました。大森の水温センサーの特性が、もしK12マーチの水温センサーと同じ特性を持っているなら、ほとんど無加工で大森メータにK12マーチの水温信号を使用できるかもしれません。 水を入れた鍋に大森のセンサーを入れ、その両端の抵抗をテスターで計ります。その結果は残念なことに、大森のセンサーとK12のセンサーは全く逆の特性を持っていることがわかりました。大森のセンサーは、温度が高くなると抵抗が高くなるPTCサーミスタ、対してK12のセンサーは温度が高くなると抵抗が低くなるNTCサーミスタであることがわかりました。温度センサーについての詳しい説明はココを見て頂くとして、とにかく大森の水温計はPTCサーミスタ用にメータ回路が設計されているため、そのメータにNTCサーミスタを用いて正確に水温を表示させるのは、困難を極めます。(もちろん不可能ではありませんが、それにはセンサーの詳細なデータシートや、メーカの回路図が必要です。)やむなく、この方法はあきらめることとしました。 実は、あきらめたと簡単に言っていますが、それまでには結構研究しまして、最終的には大森の水温計を割って、中の回路基板から回路を複写したところまでしました。しかも、K12マーチが納車される前に。。
では、どうするか?やはりラジエターホースを切断するのか…?!しかし、上記で大森のメータはふたを割ってしまって、見栄えは悪くなってしまったし…。ぼーっとK12マーチ関連のWWWを見ていたときに、ふとあるユーザーさんのホームページを見つけました。そこにはテクトムのマルチモニター「CMX-100 N2」のことが紹介されていました。診断用のコネクタに接続するだけで、車速や回転数、水温、吸気温などが表示できるものです。ん、これってまさに上の表の5番目の方法!!やっぱりやっているメーカーがあったか!!と思いました。早速ホームページから購入ボタンをクリック、クリック!!(笑)
注文したときには品切れだったのですが、1週間ほどして入荷されやっと今日、品物をゲットしました。取り付け後、また書きます。