グランドセイコー GS スプリングドライブ SBGE005 を購入して1週間が経ちました。国産最上級クラスの腕時計を毎日15時間ほど腕に巻いてみての感想を書いてみたいと思います。
まず付け心地に関しては、とにかくすばらしいの一言。高価な腕時計とはこういうことか、ということを、付け心地で思い知らさせるとはちょっと意外でした。腕への座りが良く、文字板があっち向いたりこっち向いたりということが少ないです。またステンレスのブレスレットは、装着直後はチタン以上にヒヤッとしますが体温と同化するとシットリとして非常に心地よい。ここ数年身につけてきたチタンのブレスレットは、シットリというよりサラッとして、何というか無機質な感じ。腕時計の基本ってやっぱりステンレスなんだなぁと改めて認識しました。
ステンレスのケースとブレスレットの表面処理もすばらしいです。鏡面部分は一切の歪みがなく、曇り処理部分とのコントラストが立体感を感じさせます。グランドセイコーの表面処理は、ザラツ研磨といって多くの人の手が加えられているそうです。
http://president.jp/articles/-/6985
http://www.gressive.jp/special/selection/200912-seiko/02-03.html
ただし、ステンレスには一切のコーティング処理はされていないため、傷の付きやすさは仕方の無いところのようです。購入1週間、最新の注意を払っていることもあり、幸い何かにぶつけたり、こすったりは一切していませんが、鏡面仕上げ部分を光をかざすと所々に細かな線傷が認識できるようになってきました。この辺は、シチズンのデュラテクト、特にDLCと比較すると雲泥の差です。DLCは半年使ったぐらいでは細かな傷一つもつきませんし、しまった!と思うほど強くドアノブにぶつけても全く平気ですが、グランドセイコーは、相手が金属だと一撃でしょうね。気をつけようと思います。
文字板の美しさも特筆もの。元々はクリーム色の文字盤ですが、光の加減に寄って白だったり、ゴールドだったり、シルバーだったりに表情を変えます。また「厚銀放射文字板」によって反射する光は綺麗な放射状のラインになり、太陽の光を当てると惚れ惚れするほどの美しさです。
また、GMT付きモデルはGMT無し3針モデルよりも針が1本多い分、文字板に奥行きがあるため、ノッペリ感の無い立体的な印象を与えてくれます。光に当てると、各針の陰が文字板に写り、これまた綺麗。5分毎に埋め込まれているインデックスや針は多面研磨されており、完全な鏡面仕上げになっているため、キラキラ度合いがハンパない。シンプルな時計だけに、光を当てた時のきらびやかさのギャップが楽しいし、高級感を増幅させます。
GMT機能について簡単に説明しておきます。
時計によってGMT機能の実装方法は異なっており、例えばGMT針は固定(つまり時針と同じ時刻を示す24時間針)で、24までの数字が印刷されているベゼルを回すことでGMT針に別の時刻を割り当てる、という時計がありますが、グランドセイコーは、GMT針と時針を自分の好きな別々の時刻に設定することができます。
リュウズを1段引くと秒針を止めずに時針のみを1時間毎カチッカチッと動かすことができます。これはカレンダーの設定も兼ねているので、AM/PMを把握しながらカレンダーを合わせることができます。
リュウズを2段引くと秒針を止めつつ、時針、分針を動かせるのですが、その時はGMT針も連動して動きます。つまりGMT針は秒針を止めないと動かせないので、一度設定したら頻繁には動かせません。
例えば、GMT針をパリ時間に、時針を日本時間に合わせたい場合、まずリュウズを2段引いてGMT針がパリ時間になるように調整します。この時、時針がどこを指そうが気にしません。そして秒針を時報に合わせリュウズを1段戻し秒針が動き出します。最後にリュウズを1段引いた状態で時針とカレンダーを日本の時刻と日付に合わせます。
私は、GMT針を日本から9時間マイナスの世界標準時(=ロンドン)時間に合わせてます。主な仕事のパートナーがロンドンにいるということもあるし、北米の場合はGMT針から5時間引けば良いだけなので欧米の時間がイメージしやすいためです。
海外に移動した場合の現地ローカルタイム設定を想定すると、リュウズ一段引きで時針のみを動かせて秒針は止めずにすむので、あらかじめ日本でGMT針を日本時間にして秒針をピッタリ正確に合わせておけば、海外に移動したあともピッタリ正確な秒針のまま時針を現地時間に合わせられます。海外に行く機会が多い人には便利な機能だし、加えてスプリングドライブの精度が高く1週間の海外滞在期間ぐらいなら全くズレないからこそ、スプリングドライブGMTはオススメしたい時計です。
精度の話がでましたので、この1週間の精度の実績を報告します。丸1週間で誤差±0秒!スプリングドライブは精度が良いとは聞いていましたが、この結果は想像以上です。
ただし秒針を見ていると、一日の内、コンマ何秒進んだり、コンマ何秒遅れたりを繰り返しながら、結果的に±0秒に落ち着いているような感じがします。腕に巻いて体温で温度が上がったときと、外して温度が下がったときで誤差を相殺しているようで、それは電波時計のような完璧なロボットではなく、正確でありながらもどこかあいまいな人間味を感じる動きになっています。
SBGE005はシースルーバック(時計の裏がガラス)になっており、スプリングドライブの動きの一部を見ることができるようになっています。こちらのエントリを参照。
じつはこのガラスにもグランドセイコーのロゴマークがコーティング(推測)で刻まれているという事実を知らない人は多いと思います。実物で見ても光の加減を調整することでやっと見えるくらいなので、それを写真にわかりやすく撮るのは至難の業ですが、こういう見えない部分へ、あえて見えづらい仕掛けを施すところもニクいなぁと思います。
購入1週間後の今日、セイコーから保証書が郵送で届きました。グランドセイコーは、購入時ショップで登録カードに住所氏名を記載すると、後ほど名前入りの保証書が郵送されてくるという仕組みです。
保証書の他にも、購入してくれたことに対するお礼の手紙やアフターサービスの案内、アンケートなどが同封されていました。
名前入りのお礼状や保証書を後日送ってくれることによって、所有した喜びを再確認させてくれるので良い仕組みだと思いますが、せっかくならお礼状にセイコー社長が直筆サインしてくれるとプレミアム感が出てさらに良いと思うのですが、いかがでしょう?セイコーさん。
それなりに高い買い物でしたが、よくよく考えれば金額的には高性能デジタル一眼レフカメラ+高性能レンズとさほど変わらないと思うと、たまにはこんな買い物もアリかな、と思います。カメラは会社に持って行けませんが腕時計は常に身につけていられますし、気分に対するコストパフォーマンスは高いですね。
その代わりデジタル機器や舶来の時計と異なるのが、国産時計はグランドセイコーと言えどもリセールバリューが非常に悪いと言う事実、もしイヤになっても売れば良いや、という保険は効きません。だからという訳ではありませんが、こいつとは40代を共に過ごしていきたいな、と考えています。
グランドセイコー GS スプリングドライブ SBGE005 購入1週間