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EOS 5D Mark III と D800 / D800E の比較

Canon マウントを使い続けて約10年(間は空いていますが)、そして今年5月から EOS 5D Mark III を使っている Canon ユーザーの私が、人生初の Nikon マウント D800/D800E を使ってみた画質以外の違いと所感を書いてみようと思います。今までずっと Canon を使い続けてきたけど、D800/D800E が気になって仕方が無い、と言う方に参考になればと思います。基本的には、EOS 5D Mark III と、D800/D800E の比較となります。
1. 使い勝手、操作性は慣れの問題
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有名な話ですが、Canon 機と Nikon 機であらゆるものが左右が逆です。マウント方向、ズームリング、各種ダイヤルなど。さすがに十字キーの左右が逆、なんてことはありませんが、特にズームリングとダイヤル類が逆なのは操作していて気持ち悪いかもしれませんが、慣れの問題だと思いました。
当然メーカーが違いますから、設定キーや設定メニューは全く異なりますが、、これも慣れだと思います。ただ慣れの部分を除いて考えると、設定メニューなどの操作性は、メインダイヤルで素早くグリグリ設定、確認することができる Canon 機の方が良く考えられているかな、と思います。
例えばISOを変更するもその手順は大きく異なります。Canon 機はISOボタンを押すとISO変更モードになるのでメインダイヤルでISOを変更するという手順なので、基本的に右手だけで可能です。Nikon は左手でISOボタンを押しながら右手でメインダイヤルを回す必要があり両手での操作が必要となります。個人的には Canon の方が操作性は良いと感じています。
また設定メニューの表示スピードやダイヤルを回したときの応答速度などは、厳密な比較はできませんが EOS 5D Mark III の方が速いように感じます。使っていてより気持ち良いのは EOS 5D Mark III です。
2. AFは基本性能の EOS 5D Mark III、顔認識の D800/D800E
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AFについては、まず中央1点のみしか使わない、という男気ある方は、どちらを選んでも違いは無いと思います。中央1点のクロスセンサーについては、その精度、暗所での合焦力は同等で非常に高いレベルだと思います。ただ、そのアルゴリズムは EOS 5D Mark III と D800/D800E で少し異なっており、ほとんど真っ暗な場所でAFした場合、EOS 5D Mark III は何秒もかけてリトライを繰り返しシャッターボタン半押し中はなんとか合焦するまで頑張ろうとします。D800/D800E の場合はすぐに諦めてしまうため、AFリトライはシャッターボタンを離したあと、再度半押しが必要です。
EOS 5D Mark III と D800/D800E のAFで一番大きな違いは、クロスセンサーの数とその配置です。EOS 5D Mark III は41点ありAFフレーム内全体をカバーしているのに対し、D800/D800E は15点で中央部にしか配置されていません。私はほとんどの場合、被写体によってAFポイントを動かすのですが、私のようなAFの使い方においては EOS 5D Mark III の方が大幅に優れているとしか言いようがありません。両者ともクロスセンサーの能力が高いだけに、このAFポイントをAFフレームの隅まで使える EOS 5D Mark III のメリットは相当大きいなと感じています。EOS 5D Mark III に慣れてしまうと、D800/D800E を使ったときにAFフレームの左右で合焦せずイライラすることになります。また、EOS 5D Mark III は、クロスセンサーのみを使うという設定が出来たり、領域拡大AF、ゾーンAFなど、多彩なAFモードを設定できるため、被写体によって一番適したAFモードにすることでAFの合焦率が上がると思います。
反面、D800/D800E は、EOS 5D Mark III ほどの多彩なAF設定はなく、基本的にはシングルAFかコンティニュアスAFのみかの設定になります。これだけ見ると EOS 5D Mark III から見劣りするように感じますが、D800/D800E が強いのは、ライブビューでなくても使える顔認識AFと、コンティニュアスAFモードの時の3Dトラッキングによる追尾AFです。
特に顔認識AFは感動モノです。コンティニュアスAFにするとAFフレームが人間の顔を追いかけ続けるのはファインダーをのぞいているだけで楽しいです。望遠レンズで人物を狙う場合にものすごい威力になると思います。
だからこそ余計に D800/D800E のAFでもっと多くのクロスセンサーを使えれば良かったのになぁという気がします。D800/D800E の後継機種があるとすればNikonはこのあたりを改善してくるでしょうね。
3. 静音シャッターの EOS 5D Mark III、歯切れの良い D800/D800E
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この件は EOS 5D Mark III を購入する際にも書きましたが、EOS 5D Mark III の静音シャッターはすばらしいです。シャッター音を響かせられない場所での撮影は、EOS 5D Mark III の独壇場です。
ただシャッター音はやっぱり D800/D800E の方が好みでしたね。どうしてもミラーがバタバタする感じの EOS 5D Mark III は気に入りません。そのため撮影していても D800/D800E を使っている時の方が楽しいのです。
あと細かい部分ですが、シャッター耐久回数(決して保証回数ではないところに注意)は、EOS 5D Mark III が15万回なのに対し、D800/D800E は20万回と少しリードしています。私は一切連写をしないですし、空打ち無駄打ちもほとんどしませんので、関係の無い部分ですが。
4. 撮像範囲変更(クロップ)の D800/D800E
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クロップ撮影モードは D800/D800E の大きな武器です。単純な機能ですがいろんな恩恵が受けられます。安いDXレンズが使える。FXレンズでもおいしい領域のみを使える。単焦点レンズをステップズームのように使える。軽いDXレンズでより望遠が使える。DXモードだとAFフレームがほぼ全域で使える。ファイルサイズを小さくできる。連写が早くなる。など。例えば、価格の安いナノクリ単焦点レンズ「AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G」1本で、28mm、33mm、42mmという画角が使えるようになるのです。クロップでなくともあとからトリミングしてしまえば同じことなのかもしれませんが、私は撮影する際に画角をイメージすることはとても重要だと考えているので、このクロップ機能には大きな可能性を感じています。
なぜこの機能を EOS 5D Mark III が付けないのか本当に悔やまれます。特許などの関係で出せないのでしょうか?DXモード(Canon の場合はEF-Sモードと言うのでしょうけど)では広範囲でクロスセンサーが使えるし連写がさらに早くなるのであれば(例えば8fpsとか)、最強のレース専用機になると思うし、これだけで購入層がぐっと広がると思うのですが。
5. RAW現像ソフトウェアと付加機能
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Canon のRAW現像ソフトウェア「Digital Photo Professional」は無料で全機能を使える上に、デジタルレンズオプティマイザ機能がすばらしいです。詳細はこちら。ただ難点としてはDLO適用に時間がかかるため、すべての写真に適用は厳しいという点。とはいえ、すばらしい機能だと思います。
Nikon のRAW現像ソフトウェア「ViewNX2」は無料ですが、全機能を使うためには「CaptureNX2」という有料ソフトウェアを買う必要があります。なぜここで小銭を稼ごうとするのか理解できません。
6. その他
その他、両者に細かな違いが山ほどあるのですが、私の使い方においては関係のない部分ですので割愛します。
結論
私にとって両者の戦いのポイントは、AFが強い EOS 5D Mark III か、解像度とクロップとシャッター音の D800/D800E か、に絞られました。EOS 5D Mark III のAF性能は本当にすばらしいのですが、どうしても有利な点が多い D800/D800E に軍配が上がります。EOS 5D Mark III にクロップ撮影モードがあったら D800/D800E に勝っていたかもしれません。しかし最終的には写りの良い単焦点レンズをメインに使っていきたいと考えているからこそ、このクロップ機能を重視してしまいます。
D800 と、D800E の戦いは、こちらで書いた通り、D800E に軍配が上がっているので、今後は D800E を残し、EOS 5D Mark III と D800 は手放すことになりました。
EOS 5D Mark III と D800/D800E。見たり聞いたりするだけでなく、実際に使ってみないとわからないことがたくさんありました。購入→売却での損失はそれなりにありますが、これを支払うことで選択したカメラを気持良く使っていくことができるのであれば、相応の勉強代だと思っています。育児の関係でフィールドテストが出来なかったのは悔やまれますが、それなりの判断ができたことを満足しております。
数多くの出入りはありましたが、現在は、D800E、DP2 Merrill、そして DSC-RX100 の3台が手元に残っています。どの機種もそれぞれの得意分野で他の追随を許さない存在感を主張できるすばらしい3台だと思っていますし、この3台で子供の成長を残せていけることにとてもワクワクしています。

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